不動産相続と売却 Estate

ファミリー背景画像 ファミリー背景画像1 ファミリー背景画像2 ファミリー背景画像3 ファミリー背景画像4

不動産相続と売却
について

大事な家族が亡くなった場合、相続する遺産は何もお金だけではありません。戸建ての家やマンション、山林といった土地なども、不動産として相続する遺産となります。もしこれらの不動産を売却したいと考えた場合、通常の売却とは異なる注意点なども出てきます。ここでは不動産を相続した場合の流れや売却の仕方、疑問点などについてみていきたいと思います。

不動産の相続について

イメージ図1
不動産を相続することになったら?

遺産相続において、亡くなった方の残した遺産が家や土地の「不動産」であることは珍しくありません。むしろ現金や預貯金と並んで、一般的な部類といえるでしょう。

ただし不動産ならではの特徴もあります。それは「簡単に分割できるものではないため遺産分割協議での対応が難しい」、「評価(金額的な価値)を行ったり売却したりすることに時間がかかる」といったことです。これらの特徴故に有効な遺言書が存在しない場合は、その扱いをめぐって相続人間でトラブルにもなりかねません。

そのためこのページでは手続きの流れや税金のことなど、基本的なポイントについてお話していきたいと思います。まずはその特徴をつかむことで、実際に不動産を相続した際に慌てることのないようにしておきましょう。

不動産相続の流れ

フローは大きく4段階

では早速、不動産の相続手続きがどのような流れで進むかご説明したいと思います。そのフローは大きく分けて4つの段階があります。各段階ごとにポイントを見ていきたいと思います。

1. 財産と相続人を調査・確認

まず最初に、亡くなった方のこと、残した遺産について(預貯金・借金・株式・不動産など)、関係する全ての相続人などについて細かく調査・確認をおこないます。これは不動産相続だけに限った話ではありませんが、この詳細な調査を怠ってしまい、後から遺産や相続の対象となる人が増えたしまったりすると、トラブルになったりそれまでの合意形成が水の泡になってしまう可能性が高くなってしまいます。慎重に進めるようにしましょう。

2. 遺産の分割協議

遺産分割協議とは、相続人が全員で残された遺産の分配方法について決定する話し合いのようなものです。複数の相続人がいた場合、全員が漏れなく参加する必要があります。ここでの意思決定を経て、その後の相続手続きへと進むことになります。ここでは不動産相続についての遺産分割協議のお話ですので、不動産を分ける主な方法については、以下の3つをご紹介します。

・換価分割

遺産として残された不動産を売却し、一度現金化したものを相続人全員で遺産分割する方法です。一番シンプルで分かりやすい方法かもしれません。

・代償分割

だれか1人の相続人が対象の不動産を相続し、その他の相続人に対しては「その不動産の価値を現金化して分配した場合に適正となる割合の金額」を利益調整として支払う方法です。例えば父親の遺産である不動産を長男が相続し、次男に対して長男から1000万円を利益の調整として支払う、というようなケースです。

・共有分割

相続者全員が、対象の不動産を共有財産として相続する方法です。例えば父親が亡くなって遺産として残された実家の土地と建物を、母親と長男が共有財産として相続して一緒に住み続けるというようなケースです。

この3つについては、不動産相続に関してよく出てくるものです。覚えておきましょう。どの分割方法についても言えることですが、ポイントは「対象不動産の価値をしっかりと評価し、それを現金に換算したと想定して全員が公平になるような分配方法になっている」ということです。

3. 不動産所有者の名義変更

遺産が不動産の場合、現金のように簡単にはいきません。相続手続きとして所有権の移転を登記し、対象不動産の「名義変更」をおこなう必要があります。タイミングとしては遺産分割協議が終了し、相続人全員での分割の意思決定がなされた後です。必要な書類を揃えて法務局に申請をおこないます。主な必要書類については以下のようなものがあります。

・相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票
・亡くなった人の戸籍謄本、住民票
・不動産の固定資産税評価証明書、登記事項証明書
・遺産分割協議書

書類の提出と言われても「それだけか」と思われるかもしれませんが、これらの書類は管轄の役所や法務局で取り寄せなどが必要であることと、相続人を含めた関係者の人数が多ければ多いほど揃えなければならない書類の数が増えるため、かなりの手間がかかります。それに加えて申告期限などもあるため、分割協議が長引いた場合などはとくに慌てることになりかねません。

このような手続きは相続人本人が自分だけでも行えますが、ミスがあったりすると名義変更が認められない可能性がありますので、可能であれば司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。不安な方は事前に相談してみてください。

4. 相続税の申告・納付

これも相続手続き全体での話になりますが、不動産などの相続財産の価格が基礎控除を超えた場合は、相続税の申告が必要です。申告にあたって申告書の作成が必要になりますが、このような手続きも税理士などの専門家に依頼するのが一般的です。

ちなみに相続税についての解説や計算の早見表などは以下の相続税についてのページで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
初めての相続税

注意したいのはその申告期限です。相続手続きは、遺産の相続が開始されてから10ヶ月以内に完了しなければなりません。申告期限を超えてしまった場合、延滞税などが必要になりますので注意しましょう。特に遺産分割協議が長引くと、その後の手続きで必要な遺産分割協議書の作成が遅れるため、全体のスケジュールに影響します。冒頭で事前の調査・確認が重要なお話をしたのはそのためです。

不動産の売却について

イメージ図2

遺産として相続した不動産を売却したいと考えた場合、一般的な不動産売却とは異なり、いくつかの注意しなければならないポイントがあります。ここでは遺産として不動産を相続してからその不動産を売却するまでの流れを、ポイントを交えながらお話したいと思います。

不動産売却の流れ

前の章でも少しご説明した通り、遺産として相続した不動産の売却方法については、主に以下の2つの方法があります。

1. 相続人の1人が単独で相続する場合の不動産の売却

例えば兄弟が2人いて、兄のみが単独で不動産を相続し弟は別のもの相続したというようなケースです。このケースであればこれ以上に利害関係が広がりませんので、手続きは比較的スムーズに進むと思います。

基本的には以下のような流れで進みます。

STEP.1
遺産分割協議をする
相続人全員で協議し、誰が相続するのかを決めます。
なお、遺言書がある場合は、遺言書の内容が最優先となります。
STEP.2
相続登記をおこなう
決定したら、所有者名義をその人の名義に
変更する必要があります。これを「相続登記」と言います。
STEP.3
売却する
登記が終わってその人の所有物になったところで、
売却します。この場合は通常の売却手続きと変わりません。

相続人が少なく、遺言書で分割方法などが指示されている場合は一番シンプルで手間の少ない方法だと思います。ただし一般的には相続人が複数人いる場合が多く、有効な遺言書などが存在しない場合は遺産分割協議での決定になります。そういった場合は、全員の相続人に法定相続分の割合を得る権利がありますので、なんらかの形で遺産を分割できる形にすることが必要になります。詳しくは次の項でみていきましょう。

2. 換価分割のための相続不動産の売却

相続人の数が複数人である場合、そのままでは遺産となる相続不動産を均等に分割することが難しいケースもよくあります。特に不動産は、相続する遺産の種類の中でも価値の高い部類になるので、かたよった主張をすればトラブルになる可能性が高まります。そのため現実的な分配方法として、相続する不動産を一度売却して現金化します。その後、その現金を法定相続分などの妥当な割合で相続人全員で分配するという方法が取られることがあります。これを「換価分割」と言います。

換価分割は以下のような流れで売却をおこないます。

ステップ1
遺産分割協議をする
まずは遺産分割協議をします。この段階で、話し合いにより売却して
換価分割することが全員の一致で決まったとします。
ステップ2
とりあえず仮の代表者で登記
相続不動産を売却するためには、故人の名義から名義変更することが
必要になります。(亡くなった人の名義のまま売却はできません)
そのため、相続人の中からだれか1人を仮の代表者として相続登記をして、
名義変更をおこないます。その後売却の手続きに移るという形です。
ステップ3
売却する
とりあえずの登記が終わって、仮の相続人の所有物になったところで
不動産を売却します。この場合、手続きとしては通常の売却手続きと
変わりません。
ステップ4
現金を分割する
この不動産の売却で得られた現金を、相続人の全員で分割します。
分割の内容については、遺産分割協議で決定した内容に沿う形となります。

以上が換価分割の大まかな流れになります。相続人全員の合意が得られれば、合理的な方法だと思います。ただし不動産相続の難しい所として、「売りたいと思っても簡単に売れないかもしれない」ということもあります。都市部などの需要の高い土地であればすぐに買い手が見つかるでしょうが、地方のそれも利用価値の低い土地などであれば簡単に売れない可能性もあります。また売れたとしても、価格や交渉で損をしないようにしないと全員の利益にかかわります。

ですので、遺産相続としての不動産の取り扱いには最初の段階から信頼のおける不動産会社などに相談して、一緒に対応にあたってもらうことをお勧めします。当然費用は発生しますが、売却できなければ分割することができませんし、得られる利益の大きさから考えてもスピードと安心を重視した方が良いのではないと思います。

売却と税金

イメージ図3
かかる税金について

ここでは土地を売却した際の税金についてご説明します。相続全体の流れとしての相続税とは別のお話ですので注意してください。相続人全員で遺産分割する際に一度現金化する必要がある場合などのケースをイメージすると、分かりやすいと思います。

譲渡所得税・住民税

土地などの不動産を売却した際の利益(譲渡所得)には、「譲渡所得税」と「住民税」が課税されます。例を挙げると、1000万円で手に入れた土地を2000万円で売却した場合、利益(譲渡所得)は1000万円ですので、この儲かった1000万円に対して譲渡所得税と住民税が掛かってきます。ちなみにその税率については、保有期間によって変わってきます。

対象の土地を「5年超保有」した場合(長期譲渡所得)の税率は「20.315%」であるのに対し、「5年未満で売却」した場合(短期譲渡所得)は「39.63%」になり、短期譲渡所得の税率は長期譲渡所得の約2倍になります。

・長期譲渡所得(土地の保有期間が5年超)の税金

長期譲渡所得×(所得税率15.315%(復興特別所得税2.1%を含む)+住民税率5%)

・短期譲渡所得(土地の保有期間が5年未満)の税金

短期譲渡所得×(所得税率30.63%(復興特別所得税2.1%を含む)+住民税率9%)

相続する土地の保有期間の計算方法に関しては、「亡くなった人(被相続人)の保有期間をそのまま引継ぐ」形となります。 つまり、故人が亡くなって相続人が土地を相続した日から5年ということではなく、亡くなった被相続人がその土地を最初に取得した日から5年超かどうかが判定のポイントになります。

印紙税

土地を売却する際に必要な売買契約書には、「印紙」が必要が必要です。これは一般的な契約書にも出てくる話なので分かりやすいと思います。 印紙税の額は、次の契約金額の区分により定められていますので、参考にしてください。(令和4年3月31日までの間に作成される軽減措置適用後。契約金額の区分を一部抜粋)

契約金額 印紙税の額
(軽減税率適用後)
100万円超え500万円以下 1,000円
500万円超え1,000万円以下 5,000円
1,000万円超え5,000万円以下 10,000円
5,000万円超え1億円以下 30,000円
1億円超え5億円以下 60,000円
その他の諸費用

その他にも、費用がかかるものがあります。これについては以下を参考にしてください。

1. 不動産業者への仲介手数料

不動産の売却を依頼した不動産業者に支払う手数料になります。なお仲介手数料については、不動産の売買価格によって上限が定められています。例えば、売買価格が400万円超の場合は、売買価格の3%に6万円と消費税を加算した金額が上限となります。

2. 登録免許税

売却した不動産について、金融機関による抵当権(住宅ローンの利用をしていたなど)が設定されている場合には「抵当権抹消登記」を売主の負担でおこなう必要があります。これにかかる登録免許税は「不動産数×1,000円」になります。またこれらの登記を司法書士に依頼する場合は、別途報酬も発生します。(相場は1件1万円くらいが目安です)

3. 土地の確定測量費・既存建物の解体費用など

境界が確定していない土地を売却したいと考えた場合、そのまま売却することはできません。そのため測量などを行ったうえで売却するケースがあります。このようなケースでは測量の費用として土地の「確定測量費」が発生します。また土地を売却したいと考えたときに、その土地の上に既に何らかの建物が建っている場合はその建物を解体する必要があるため、「解体費用」が発生します。

財産が不動産で残された場合、その価値評価の調査から実際に売却して現金としての利益を得るまでに、多くの複雑な手続きと時間が必要です。ご自身の知識のみで完了することは困難だと思いますので、ぜひ専門知識のある専門家に相談することをお勧めします。相続さがでは、経験豊富な不動産事業者もご相談に対応させていただきます。
相続さがの各種専門家のご案内

不動産相談と売却に関する
Q&A

Q. 引渡しの時期は売却後すぐでないといけませんか?

ほとんどの不動産業者については、次の住居への入居時期も含めて融通を利かせて対応してくれるのではないかと思います。もし不安があれば、あらかじめ先に相談しておくことをお勧めします。

Q.相続した不動産がなかなか売れません。どうしたらよいでしょうか?

考えていたように簡単に買い手が見つからないこともありますので、そんな時は誰しも不安になるものです。不動産がなかなか売れない理由として多いのは、「需要に対して販売価格が釣り合っていない」というものです。ようするに、少し高く設定してしまっているのかもしれません。この場合は価格自体を少し下げるか、逆に費用は掛かりますがリフォームなどの手を入れて、価値を上げて販売価格を維持するか、などの方法が考えられると思います。

いずれにしてもこのあたりのノウハウは地元の不動産業界に精通している人にしか分からないところもあります。困ったときは実際に不動産業者などの専門家に相談してみましょう。

Q. 売却しやすい時期はありますか?

ポイントとしては賃貸物件の動きが参考になります。入学や転勤などの春先(1~3月)や秋口(9月~11月)などは物件そのものの需要が高まる時期ですのでお勧めです。いずれにしてもそのための手続きや準備も必要ですので、シーズンに合わせるためには早めの行動を心がけましょう。

Q. 売ってよいか否か迷っています・・。

売却することを迷われているのであれば、すぐに決断する必要はありません。今現在の金額としての価値、後の利用計画、売却後の資金運用のなど、どうすれば一番大きな利益を得られるかを予測してみるのも良いと思います。残された大事な不動産ですので、慎重に検討して後悔の無いように決定してください。