遺言書の作成方法とは Will

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遺言と遺言書
について

遺言書というとテレビドラマなどのイメージから、「亡くなった方が残した最後の手紙」という印象を持たれている方も多いと思います。ですが相続手続きにおいては、実際に「遺産を残す人が生前にその分配の仕方などを記しておくもの」という役割があります。ただ作成すれば良いという訳ではなく、種類や記述の仕方などにも法律で決められた形式がありますので、しっかりと理解しておきましょう。

遺書と遺言書の違いって
なんですか?

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遺言とは

遺書とは一般的に、「自分の死後のために書き残された手紙」のことを指すものです。ドラマや小説の影響から、主に自殺者や死を覚悟した人が書き残した手紙、というイメージが強い方もいることでしょう。手続き的に必要なものというよりは、もっとプライベートな内容を書き残した個人的な伝言のようなイメージのものです。

遺言書とは

その一方で遺言書というのは、遺産を残す人(被相続人といいます)が自分の亡くなった後のことを考えて、その遺産についての分配方法などを生前に準備しておく、「明確に法的な効力を持つ書類」になります。 ただし、思いついたことをただ紙に書き残せば良いというものではありません。決められた形式にしたがって記述し、署名・捺印をおこないます。

万が一不備が見つかりその効力が無効になってしまったら、残された相続人の人たちは混乱しますし、さらには故人の願い通りの分配とはならない可能性も出てきます。これでは本末転倒です。必要であれば専門家にアドバイスをしてもらいながら、確実に実行される遺言書を用意する必要があります。

遺言書の種類について

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4つの種類

遺言書には、実は大きくわけて4つの種類(正確には3種類+1種類)があります。それぞれに特徴がありメリット・デメリットもあるのですが、一番大きなポイントは実行されることへの「確実性」ではないかと思います。

「遺言書なのだから、書けば当たり前にその通り実行されるだろう」と思われている方も多いかもしれませんが、絶対にそうとはいいきれません。なぜなら複数人の間で大きな利益が動く相続について、偽造やトラブルが絶対に無いとは言いきれないのです。遺産を残す人もそれを相続する人も、誰も無用な混乱など望んではいないはずですので、ここでは各遺言書の内容とその違いについて、比較しながらご紹介します。実際にご自分が相続手続きの当事者になった場合は、状況に応じて最適なものを選択してください。

1. 自筆証書

自筆という言葉からもわかるように、一般の方が一番イメージしやすい遺言書かと思います。「自筆証書」とは、その名の通り自筆で書く遺言書のことです。当たり前ですが、すべて自分で書いてしまえば特別な費用はまったくかかりません。もし後から内容を変更したいと思っても、簡単に書き換えることが出来ます。ならばすべて自筆証書で良いような気もします。

しかし簡単に作成できるということは、簡単に偽造してしまえることとイコールなのです。例えば小規模な遺産を、限定された家族などに残す場合はこの遺言書でも良いかもしれません。しかし例えば大企業の社長さんが莫大な遺産を残すような場合、この方式では少し不安を感じる方もいることでしょう。このあたりが自筆のデメリットということになります。

もちろん最低限の証明手続きは必要になりますので、確実に故人が書いたものであることを家庭裁判所に認定してもらう「検認」が必要になります。

2. 公正証書

「公正証書」は一番認知度が高く、よく利用される形式の遺言書です。国の役所である「公証役場」で作成され、その内容には必ず公証人と呼ばれる人のチェックが入ることになるため、ほぼ確実に法的効力を持つ遺言書を作成することが出来ます。また家庭裁判所の検認も不要で、相続が発生した時点から効力が発生します。このあたりの特徴は、自筆証書と比べても大きなメリットだといえます。

メリットしかなさそうな公正証書ですが、実はデメリットもあります。それは、手続きの煩雑さと作成にかかる費用です。 そのやり方は、まず自分で遺言書の原案を考えます。どの様に遺産を相続させたいのか、希望する形を考えるイメージです。その後その原案を公証役場に持ち込んで、実際に公正証書として完成させます。しかし、この一連の流れが煩雑で、なおかつ時間もかかります。さらには公証人や立会人といった必要な人々に支払う費用なども発生します。より確実性の高い遺言書を残すために、やることも費用もアップするということになります。

3. 秘密証書

秘密証書」とは内容を誰にも知らせることなく、遺言書の存在のみを公証人に証明してもらう形式のことです。遺言書の内容を、公証人も含めた第三者の誰にもみせたくない、という場合には有効な手段です。これだけ聞くと、非常に機密性の高い安全なイメージを持たれるかもしれませんが、実は現在では非常にマイナーな手段となっています。

というのも、公証人も含めた誰にも見せないということは、その記述内容を誰にもチェックしてもらえないということになります。冒頭にもお話したように、遺言書が法的効力を持つためには、その記述が決められた形式にのっとっている必要があるため、このやり方では機密性を意識しすぎるあまり、遺言書自体が無効になりかねないリスクがあります。さらに近年の法改正により、自筆証書を法務局で管理する制度が出来たため、そのメリットも薄くなっています。このような点がデメリットと判断され、件数の減少につながっているようです。

4. 特別方式

実はここまでにご説明した3つの形式は、いわゆる「普通方式」と呼ばれる一般的な形式で、予め準備しておくタイプの遺言書になります。それに対して、もう1つ「特別方式」と呼ばれるタイプの遺言書があります。これは急に命の危機が迫ってきたような場合の、「緊急時の遺言書」というイメージで構いません。

例えば普段何事もなく平穏に生活していた人に、ある日突然大きな病気が見つかったとします。入院することになり、医師からは余命が宣告され、ゆっくりと時間をかけて普通方式の遺言書を用意することは難しい状況に陥りました。このような場合に、複数人の立会人を交えて急ぎ作成するのが特別方式の遺言書です。その特殊性から、口頭や代筆も認めれらます。また病気だけでなく、その他にもいくつか分類されるケースがあります。

あえて選択するような形式ではありませんが、万が一の場合にこのような遺言書を残すことができることも、覚えておいて損はないと思います。

有効な遺言書の作成方法

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次に、有効な遺言書の作成の仕方を見ていきましょう。ここでは現実的に選択する可能性の高い、自筆証書の場合と公正証書の場合の2つをご説明していきたいと思います。

1. 自筆証書の場合
内容は全て自筆で書く

遺言書の内容については、すべて自筆(財産目録以外)で書くことが定められています。そのためパソコンで作成したものや、代筆してもらったものなのは無効になります。また知らない方もいるかもしれませんが、音声やビデオ等での映像においても形式的には無効になります。注意してください。

作成した日付を必ず明記する

遺言書を作成した作成日の特定ができない場合、その遺言書は無効となってしまいます。遺言書の持つ特別性から、まれに「〇月〇日 吉日」というような書き方をされる方がいますが、これもやめましょう。相続内容以外にも、作成日・署名などはしっかりと自筆するようにしましょう。

内容の訂正・加筆・削除は
決められた方式でおこなう

書き間違いの訂正や、文言の追加には法律で決められた形式があります。こちらも間違った内容の場合は無効となりますので、訂正をする場合にも注意が必要です。

署名、押印をする

署名については、ご自身の戸籍謄本通りのフルネームで記述することが望ましいといえます。押印する印鑑については認印でも構いませんが、可能であれば実印を使う方が個人の特定につながりますので望ましいといえます。

その他

記載する内容に関しては、可能な限り具体的に記述してください。記載内容に間違いがあったり曖昧な表現が発見されると、最悪の場合法的効力を失います。具体的には、銀行などに預けている預貯金や金融資産については、その口座情報を漏れなく記載しましょう。土地・不動産についても登記簿謄本の通りに記述して、その後の手続きがスムーズに進むように気配りましょう。

執行者を指定しておく

「執行者」とは遺言書に記された内容を実現するための責任者にあたる人で、すべての相続人を代表する立場となります。将来的に開始される一連の遺産分割協議をスムーズに進めるためにも、この執行者を指定しておくとよいでしょう。

印鑑を押して封印する

自筆証書の作成が完了したら、書き終えた書類は封筒に入れて封印をしましょう。これは第三者に改ざんされることを防ぐためです。なおこの際に使用する印鑑については、自筆証書内で使用したものと同じものを使用してください。

2. 公正証書の場合

公正証書の場合は、自分で全文を作成するわけではありません。公証役場にて予め考えておいた原案をチェックしてもらい、それをもとに有効な遺言書を作成してもらいます。その後印字されたものに署名、押印して完了となります。このように、全文を自筆する自筆証書とは作成方法が異なります。

希望をまとめて原案を考える

財産をまとめたリスト(財産目録)などを作成し、それぞれの財産について誰に何を相続させるのかをはっきりさせ、原案を作成します。

証人となる人に依頼する
(2名以上)

あまりイメージが出来ないかと思いますが、公正証書の作成にあたって、「証人」と呼ばれる人の2名以上の立ち合いが必要になります。この証人は、文字通りその遺言書の有効性を証明する人たちです。誰かに依頼する場合は可能な限り自身と利害関係に無い、第三者に依頼するようにしましょう。出来ることならば、信頼のおける行政書士や司法書士などの専門家に依頼する方が安心です。

公証役場へ出向く

公証役場にて遺言公正証書が完成したら、必要なものを揃えて公証人役場へと出向きましょう。この時、証人2名以上の立ち合いのもと、公正証書の手続きをおこないます。 必要なものとしては、遺言者の印鑑証明書、相続人との関係の分かる戸籍、遺贈する場合はその方の住民票(会社へ遺贈する場合は、法人の登記簿謄本)、不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書、通帳の写し、などを準備します。 またこの際、証人となる方の住民票も準備しておきましょう。

公正証書の完成

公証役場での公正証書の手続きとしては、まず公証人が当日までに作成しておいた遺言公正証書を、遺言者と立ち会っている2名以上の証人に対して読み聞かせを行います。同時に内容を閲覧してもらい、全員でその内容に不備や間違いがないことを確認します。確認した内容に問題がなければ、遺言者が署名と押印をおこないます。また同じく公証人も署名と押印をおこないます。これにて公正証書の手続きの完了となります。公正証書の原本についてはその公証役場にて保管され、遺言者には正本と謄本が渡されることになります。

このようにある程度の時間と費用がかかるものの、公証人や複数の証人とチェックしながら完成まで到達できるため、信頼性の高い遺言書が完成します。また原本も公証役場で保管してくれるため、実際に必要なときに不明などということがありません。このあたりが、公正証書を利用する人の多いポイントといえます。

言葉自体は有名な遺言書ですが、その規定に関しては厳格に定められています。そこを理解したうえで作成を行わないと、せっかくの遺された人への想いも、無効になってしまいます。しっかりとした遺言書を用意して、のこされた大切な家族がトラブルに巻き込まれることのないようにしたいですね。

遺言書に関するQ&A

Q. 自分で書くときの注意点は何ですか?

用紙や縦書き・横書きなどの指定は特にありません。筆記用具についても自由です。ただしシャープペンシルなどは消えたり、偽造が簡単に出来てしまうのでやめましょう。レポート用紙などにボールペンや万年筆などで書くのをお勧めします。また「財産目録」に限っては、パソコンでの作成が認められています。その代わり、財産目録には毎葉に署名押印が必要です。

Q. 公正証書で作成するとはどういうものですか?

本人が最寄り(でなくても構いません)の公証役場へと出向き、公証人に希望に沿って作成した原案を伝え、公証人がそれを公正証書として作成するものです。公証役場での作成となるため、自筆では不安な「無効になる心配」もほとんどありません。第三者による偽造や、遺言者による紛失なども無いため、現在一番安全で確実な方式ではないでしょうか。ただし、立会人として証人が2名以上必要となり、費用も発生します。

Q. ビデオや録音は有効ですか?

ご存じない方もいると思いますが、これらは民法上有効とは認められません。 ただスマートフォンが一般的となった昨今、法的効力が有効でなくても、自分の想いなどを残された家族に伝えるためには非常に良い伝達手段だと思います。また実際の分割協議の際などに、「故人の意思を尊重した遺産分割」を円滑に進めることに役立つメリットもあると思います。

Q. 複数の遺言書が出てきましたがどうすれば・・

この場合は、後から書かれた遺言書(日付の新しいもの)の方が有効となります。 万が一内容に矛盾する部分がある場合は、その矛盾する部分に関しても、後から書かれた遺言書(日付の新しいもの)が有効となります。